ベストプラクティスという言葉に惑わされるな

今回から、戦略情報化企画の話題に移ります。経営戦略策定では、今後の方向性を決定しましたが、その中で、ITを使えばより効果的に目標を達成することができる項目を抽出しました。
戦略情報化企画でも、経営戦略策定と同じ方法を取ります。現状の情報システムを分析し、あるべき姿をシステム目標として設定し、そのシステム的な評価指標を設定します。


この辺になると、読者の皆さんもおなじみの手法だと思います。今後の開発プロジェクトに対する要求仕様を決定する方法です。この中で、特に、基幹システムの開発・導入を念頭において、課題点を取り上げて行く方針です。考え方自体は、基幹システム以外でも十分通用すると思っています。
この段階になると、現状業務フローの確認をすると思いますが、それに関連する誤解しやすいポイントを今回は、取り上げます。
皆さんが良く使う言葉で、ビジネスモデル、ビジネスプロセス、ベストプラクティス、プロセステンプレートと言うものがありますが、これらは、何でしょうか?
これらの定義を明確にしないと、意思疎通できませんので、まず、考えて見たいと思います。これらをおおさこ流に定義すると、以下のように考えればよいと思います。
ビジネスモデルとは、特定の業界やソリューションに限定されない、適用が限定されない企業戦略遂行、目標達成のためのフレームワーク。
ビジネスプロセスとは、戦略目標達成のための業務の一連の作業工程。
プロセステンプレートとは、標準化された業務の作業単位。
すなわち、ビジネスモデル > ビジネスプロセス > プロセステンプレート
という関係が成り立ちます。
特異なのが、ベストプラクティスで、これは、ベンチマーキングをする際に、自社をその状態に近づけるべき最高水準の状態として、比較・分析の対象となるビジネスプロセス、業務推進の方法、ビジネスノウハウです。
ちなみに、googleで検索して見た結果(日本国内のみ)は以下のとおりです。
ビジネスモデル  1,090,000件
ビジネスプロセス  222,000件
ベストプラクティス 71,800件
プロセステンプレート 290件
非常に概念の広い言葉をよく使っていますね。
よく「ERP はベストプラクティスの集まりである」といわれます。本当でしょうか。
ERP が提供しているのは、複数の企業で使用されている業務のやり方であり、ベストプラクティスではない。上述の定義を使うなら、それらは、複数の企業で使用されている標準化されたプロセステンプレートと、その集合体であるビジネスプロセスです。
SAP R/3を例にすれば、3社以上からの似通った開発要求を元に新機能が追加されて行き、今のような姿になっています。決して、到達点を考慮しながら開発されたものではありません。また、開発者が「この業務は、こうあるべきだ」と考えて開発されたものでもありません。
技術革新によって、新しいビジネスモデルが誕生した場合、そのベストプラクティス、ビジネスプロセスも変化するものです。企業戦略が異なれば、そのビジネスプロセスも異なるはずです。同じものは、業務の個々の作業単位でしかありません。
SAP時代に、ユーザ企業からよく、「R/3にはベストプラクティスが詰まっているから、それらに業務を合わせる方向で導入します」といわれました。しかし、逆なのです。パラメータの設定しだいで、プロセスはいろいろに分岐します。標準的なフローはあっても、「企業がプロセスをどのようにしたいのか」という明確な意思を持たない限り、設計できません。
このような時、ユーザは、「あるべき姿を提案してくれ」と言います。それに対して、ベンダーが「ベストプラクティスは、こうなっていますから業務を合わせてください」と対応すると、素直に、合わせられるでしょうか。合わせられなくて、アドオンのお化けになるのがよくあるパターンです。
皆さんの社内にベストプラクティスであると思われるものはありませんか。例えば、営業員で常に高い売上高を維持している人がいるとします。この営業員の行動パターンは、ベストプラクティスであると言うことができませんか。
その営業員の行動パターンを分析して、標準化し、誰でも行えるようにする。これもりっぱなプロセスのテンプレート化です。こういう方法で、社内でベストプラクティスを広めて行ったのが、ウォルマートのやり方です。ベストプラクティスは、何も企業外部にあるとは限らないのです。

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