事例:プロジェクト計画を修正し、プロジェクトを軌道に乗せる
これは、SAP ERPのスキルとプロジェクトマネジメントを融合させて実施した事例です。
製造業のA社は、SAP ERPの本社への導入を完了し、運用するようになりました。その後、子会社へ導入を展開するべく、情報システム部内に、ERP推進室が設置され、子会社導入を推進する役割を担いました。ERP推進室は、所長1名、モジュール担当5名の構成でした。ERP推進室がすべての子会社の導入プロジェクトを実施することは、人員の関係からも不可能でした。そこで、ERP推進室が中心となり、テンプレートを作成しました。また、展開は本社と子会社だけで実施することとし、外部から導入ベンダーを採用することはしませんでした。
そのテンプレートを子会社へ展開することで、導入がスムーズに進むと考えていました。経営陣からの要望もあり、一挙に5社へ同時導入する計画を立て実行し移しました。しかし、実際は、子会社のプロジェクトがまったく進まないようになってしまったのです。このような状況の中、現状を把握し、改善策を提案するよう依頼がありました。
そこで、まず、子会社のビジネスの概要と、プロジェクトの状況をヒアリングすることにしました。その結果、
プロジェクトマネジメント側面
- マスタスケジュールはあるが、詳細レベルまで落ちていない。
- WBSが作成されておらず、すべての作業を把握できていない。
- 本社と子会社の役割分担が明確でない。
- 子会社担当者が本来の業務との兼務である。
- 子会社要員は日間のテンプレート研修を受けたのみで、まったくスキルがない。
業務内容側面
- テンプレートはあくまで共通的な部分のみで、子会社のすべての業務を網羅できていない。ある子会社では、受注にEDIを使用しているが、テンプレートではまったく考慮されていない。
- 子会社が製造する製品の生産形態(標準品などの見込み生産や、受注生産など)が網羅しきれていない。
- 子会社の業務プロセスがハイレベルでしか把握できておらず、例外処理などの細かい処理が把握されていない。
など、いろいろな不備が見つかりました。
そこで、ERP推進室長と協議し、プロジェクトを一端停止し、計画を練り直すことにしました。その内容は、
- 本社で詳細レベルまでブレークダウンしたWBSを作成し、それを元に標準的なスケジュールを作成する。
それをベースに子会社と協議し、最終的なスケジュールを決定する。 - 現状業務の詳細把握をスケジュールに盛り込む。それをベースにフィットアンドギャップ分析を行う。ギャップと認定された業務への対応方法を個別に考える。
- 子会社から専任者を選定し、ERP推進室へ出向させることで、スキルトランスファーを行う。ERP推進室のメンバーは子会社専任者を支援し、専任者が子会社のプロジェクトを運営する。
- 必要な子会社へは、本社が外部ベンダーを採用し、常駐させることでスキル不足を補う。
などを反映したプロジェクト計画書を作成しました。
これを実施に移し、当初スケジュールよりも半年延長するだけで、当該子会社すべての導入プロジェクトが成功のうちに終了しました。
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